「愛がなければ」(2017年10月29日週報巻頭言 牧師 藤井秀一)

 日本や海外でソリストとして活躍する柳瀬 洋というクリスチャンのクラリネット奏者がいます。彼がクリスチャンになったのは、音楽的な挫折がきっかけでした。
 
 ドイツ留学のとき、彼は先生からいつもこういうことを言われたのだそうです。
 
「あなたは、とても器用に吹くし、勤勉に練習してくる。しかし、ただ人に言われた通りの音楽をしていても、それではなんの価値もない。そこに命がないからだ。それが、あなたの心からの歌でなければ、なんの意味もない」と。
 
 テクニックは十分だけれども、自分のなかに、喜びの歌がない。ないものはないのであって、どうにもならないという、壁にぶち当たった。当時のフィアンセにもふられてしまい、とうとう死にたいと思うほどの絶望に立ち至ったある時、クリスチャンの友人に誘われた聖書の学び会で、「愛は忍耐強い、愛は情け深い・・・」と語るコリントの信徒の手紙13章のみ言葉と出会います。
 
 ああ、自分には愛がなかった。今まで、自分は一番なのだ。自分にはできるのだ。有名なコンクールで入賞したこともあるそんな自分の頑張りに頼っていた自分が、聖書の言葉に照らされて、愛のない罪深い人間であることに気が付かされ、切なくて、その場にうずくまって泣いたのだそうです。
 
 しかし同時に、それは彼がそれまで何年も肩の上に積み上げてきた、重い大きな重荷を、足下に下ろした瞬間でした。
 
 この愛のない自分の罪のために、キリストが死んで下さった。
 
 後にこの神の愛と恵みを信じ、彼はバプテスマ(洗礼)を受けクリスチャンとなり、心から湧き上がる喜びの歌を奏でる音楽家となっていきます。

関連記事

  1. 「神の国の秘密」(2019年9月15日 週報巻頭言 牧師 藤…

  2. 2022年8月28日主日礼拝ダイジェスト

  3. 「シンプルに生きる」(2016年6月12日週報巻頭言 牧師 …

  4. 主の祈り①御名が崇められますように

  5. 消え去らない栄光

  6. 「命と希望の源 復活」(2017年4月16日週報巻頭言 牧師…