「心に納めて、思いめぐらせ」   牧師 藤井秀一

ルカの福音書が告げる主イエスの降誕物語では、羊飼いが野宿をしていたと記されています。さて羊飼いが野宿できるのは、パレスティナにおいては、おおむね3月から11月ですから、すくなくとも福音書の証言からは、主イエスの誕生は12月ではないことがわかります。実は主イエスの誕生の正しい日付は、誰もわからないのです。教会が主イエスの誕生を記念する日を定めてこれを祝ってきたのは、生まれた日そのものを覚えるためではなく、「神がイエス・キリストにおいて人となり、わたしたちを救うためにお生まれになった」というこの「出来事の意味」を喜び祝うために、さまざまな経緯を経て、4世紀頃のローマにおいて、クリスマスの祝いは始まったと聞いています。

 

さて「出来事」と「出来事の意味」は、一見同じことを言っているようですが違います。同じ出来事を体験しても、人によってその出来事の解釈、意味の受け取り方は違うものだからです。たとえば「電話をしてもつながらない」という出来事を体験した時、ある人は「あの人は今忙しい」と解釈し、ある人は「あの人はわたしと話したくない」と解釈するかもしれません。「出来事」は同じでも「出来事の解釈、意味」は、その人が自分で選び決めているのです。そしてその自分の選んだ「出来事の解釈、意味」こそが、その人自身の生き方や人生に大きく影響を与えていくものです。

暗いニュースに遭遇することの多い昨今です。しかしそうであればあるほど、「神がイエス・キリストにおいて人となり、わたしたちを救うためにお生まれになった」という主イエスの誕生という出来事の意味を、深く心に納め、思いめぐらせたいのです。

 

「しかし、マリアはこれらの出来事をすべて心に納めて、思いめぐらせていた」(ルカ2:19)

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