日本や海外でソリストとして活躍する柳瀬 洋というクリスチャンのクラリネット奏者がいます。彼がクリスチャンになったのは、音楽的な挫折がきっかけでした。
ドイツ留学のとき、彼は先生からいつもこういうことを言われたのだそうです。
「あなたは、とても器用に吹くし、勤勉に練習してくる。しかし、ただ人に言われた通りの音楽をしていても、それではなんの価値もない。そこに命がないからだ。それが、あなたの心からの歌でなければ、なんの意味もない」と。
テクニックは十分だけれども、自分のなかに、喜びの歌がない。ないものはないのであって、どうにもならないという、壁にぶち当たった。当時のフィアンセにもふられてしまい、とうとう死にたいと思うほどの絶望に立ち至ったある時、クリスチャンの友人に誘われた聖書の学び会で、「愛は忍耐強い、愛は情け深い・・・」と語るコリントの信徒の手紙13章のみ言葉と出会います。
ああ、自分には愛がなかった。今まで、自分は一番なのだ。自分にはできるのだ。有名なコンクールで入賞したこともあるそんな自分の頑張りに頼っていた自分が、聖書の言葉に照らされて、愛のない罪深い人間であることに気が付かされ、切なくて、その場にうずくまって泣いたのだそうです。
しかし同時に、それは彼がそれまで何年も肩の上に積み上げてきた、重い大きな重荷を、足下に下ろした瞬間でした。
この愛のない自分の罪のために、キリストが死んで下さった。
後にこの神の愛と恵みを信じ、彼はバプテスマ(洗礼)を受けクリスチャンとなり、心から湧き上がる喜びの歌を奏でる音楽家となっていきます。