「苦しむアブラハム」(週報巻頭言)
6月は旧約聖書の創世記に記される「信仰の父」アブラハムの物語を読み解きながら、時代を超えて語りかけてくる神の御言葉に心を傾けています。今日は創世記21章9節~21節の出来事から「アブラハムの苦悩」に焦点を当てます。
アブラハムの苦悩は、彼の家族における複雑な関係から生じました。イサクが生まれる前、アブラハムと妻サラは長い間子どもに恵まれず、ついに召使いのハガルとの間にイシュマエルをもうけました。しかし、神の約束の子であるイサクが生まれた時、家族内の緊張が一層高まることになります。
サラは、イサクをからかうイシュマエルの姿を見て、彼とその母ハガルを追い出すようアブラハムに求めました。アブラハムにとって、イシュマエルもまた大切な息子であり、この決断は非常に苦しいものでした。しかし、神はアブラハムに対して「すべてサラが言うことに聞き従いなさい」と命じ、イシュマエルもまた一つの国民の父となることを約束されたのです(創世記21:12-13)。
ハガルとイシュマエルは荒れ野に追いやられ、絶望の中で神に助けを求めます。神は彼らの泣き声を聞き、天使を通して慰めと希望を与え、彼らの命を救います。この出来事から、神は分け隔てなく、人を憐れまれる方であることを知ります(創世記21:17-19)。
アブラハムとイサク、イシュマエルをめぐるこの物語は、この世界には、人と人とが共に生きることの難しさゆえの苦悩が満ちているとしても、神の憐れみのゆえに、その苦悩はやがて良きものに変えられていく希望が示されています。私たちもその神の憐れみを信じ、苦悩の中で忍耐し、歩み続けることができますように。