「喜べや たたえよや」(2017年2月5日 週報巻頭言 牧師 藤井秀一)

今日の礼拝のなかで歌われる、新生讃美歌214「喜べや たたえよや」のメロディーは、元々ヘンデルの音楽劇「マカベウスのユダ」という、古代ユダヤの史実に基づいた英雄物語の中の「見よ 勇者は帰る」という曲です。BC165年マカベウスのユダを中心とする一族が、イスラエルを支配していたセレウコス朝に反乱を引き起こし、エルサレムを奪還します。そして約5世紀ぶりにイスラエル人によるハスモン王朝が始まりますが、この独立も数十年後ローマの占領によって終わりを告げます。そしてローマが傀儡の王としてイドマヤ(エドム)出身のヘロデ・アンティパスを王に指名し、ますます圧政が強まるなかで、ユダヤ人のなかにメシアを待望する願望も高まり、人々は律法をしっかり守るならば、やがてメシアが来てイスラエルを救ってくださると信じるようになります。主イエスが生まれ、活動されたのはそのような時代でした。

 

ヘンデルが作曲した「見よ 勇者は帰る」は、凱旋するユダを、民衆が歓喜のうちに迎える場面で歌われる合唱曲です。その後まもなく、この曲はイギリス国内で起こった合唱ブームと共に広がり、功労者を讃える場面で演奏されるようになりました。明治初期の日本にもそのメロディーが伝わり、日本初の軍楽隊の演奏レパートリーに、「見よ、勇者は帰る」も加えられ、今も自衛隊の式典において音楽隊が演奏するレパートリーの一つとなっています。

讃美歌214番「喜べや たたえよや」は、このメロディーに、主イエスのエルサレム入場の出来事をのせて歌います。それは、強い軍馬に頼る平和ではなく、無力な子ろばに乗り十字架に向かわれる主イエスこそ「平和の主」であると歌い「喜べや たたえよや」と心から賛美をささげる、わたしたちの信仰の歌なのです。

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