「分かち合う仲間へと」(2016年1月10日週報巻頭言 藤井牧師)

5000人以上の人々に、主イエスがパンを分け与えた出来事は、4つの福音書すべてに記されました。さまざまに解釈されるこの出来事ですが、単純に、主は人々の空腹を憐れみ、気にかけてくださるという意味において、まずは励まされる記事です。

どの時代であっても、生きていくうえで、食べることを心配しないで済むことはないでしょう。物があり余り、大量の食物が日々廃棄される現代もまた、例外ではありません。

「下流老人」(藤田孝典著・朝日新書)という本が去年出版されました。著者は、NPO法人ほっとプラスの代表理事。10年以上埼玉県を中心に生活困窮者支援を行っている方です。「下流老人」とは造語で、「生活保護基準相当で暮らす高齢者及びその恐れがある高齢者」と著者は定義します。「収入」、「貯蓄」、「人間関係」を失うなら、だれもがその状態になると藤田氏は語ります。また若者のワーキイングプア、母子家庭の貧困等も、身近な課題となりました。

さて、主イエスが多くの人々にパンを分け与えるにあたり、弟子たちに50人ずつの小さな組に群衆を分けさせ、共にパンを分かち合うようになさったと福音書は語ります。バラバラだった民衆が、互いに顔と顔を合わせ、共に神の恵みを分かち合う仲間とされました。

孤立化と格差社会にあえぐ現代において、この主イエスが、パンの恵みを喜びあう仲間を造った出来事が示している、意味と意義は大きいのです。

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