「立ち上がり歩き続ける思い」(2019年11月3日 週報巻頭言 牧師 藤井秀一)

10月31日首里城が火災によって焼失しました。500年以上前に建てられて以来、沖縄の文化、歴史の象徴であった首里城。沖縄戦の砲撃で破壊されましたが、1992年に復興。正殿地下の遺構部分など城壁は2000年に世界文化遺産に登録されていました。

この首里城の焼失は実に痛ましく悲しい出来事ですが、驚くべきことは沖縄県知事の玉城デニー氏が、「琉球王国の象徴であり、歴史と文化の心に彩られた首里城は、必ず復元しなければならない」と宣言し、早速、復興対策本部と寄付金の受付を始めたことです。大切なものを失ってしまった悲しみの中にありながら、その悲しみの中に座り込んでしまわず、立ちあがらせ歩み続けさせている「思い」。この「思い」のもつ希望の力をあらためて感じさせられます。

さて今日、礼拝において朗読されるみ言葉は、エルサレムの神殿に続く「美しの門」の前に置かれて物乞いをしていた足の不自由な人と、ペトロとヨハネが出会う出来事です。この二人からお金をもらえるものと期待したこの人に、ペトロは言います「わたしには金や銀はないが、持っているものをあげよう。ナザレの人イエス・キリストの名によって立ち上がり、歩きなさい」。そして右手を取って彼を立ち上がらせると、彼は立ち上がり、喜びのあまり神を賛美したという出来事です。かつてはこのペトロもヨハネも、主イエスが十字架に死んでしまった失望のどん底に落ちていたのです。その彼らを失望から立ち上がらせ、確信を持って「あなたも立ち上がりなさい」と宣言させるその「思い」は、どこから来たのか?ペトロは言います。「神はイエスを復活させられたのです。わたしたちは皆、そのことの証人です」(使徒2:32) これが失望を乗り越え、なお前に進み続ける弟子たちの、そしてわたしたちの「思い」の源泉であり、信仰です。

首里城は、沖縄戦の砲撃を含めて、少なくとも過去に四度、壊滅的な被害を受けました。しかし、そのたびに人々の心のうちにある「思い」によって、再建されつづけたのです。きっと今回も・・・・

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