「福音はとどいていますか」(藤木正三・工藤信夫)の中にこんな断想があります。
「宗教体験といえば、不思議で特別な体験を考えるでしょう。確かにそうなのですが、それが特別なのは日常性を破るという意味においてであって、特別の人に限るという意味においてではないのです。宗教はすべての人の救いですから、その体験は特別の才能などを必要としない全ての人に開かれたものである筈です。それは自分というものを見た、正確にいえば見せられた、その自分の正体の自覚のことです。日常性に安住する私達には痛い体験です。そしてこの痛さにおいてそれは宗教的なのであり、不思議さにおいてではありません。」
「自分の正体」を自覚させられ、なお失望せず、その自分が神に赦され愛されていることに、安心させられる、という体験に勝る「宗教体験」はないのです。
「イエスは女に『あなたの信仰があなたを救った。安心していきなさい』と言われた。」
(ルカ7:50)