小さい者のひとりに

「イエスさまが来てくれた」    藤井秀一
ロシアの有名な作家のトルストイの「靴屋のマルチン」は聖書から生まれた物語。
ある町に地下室の小さな部屋に住んでいたマルチンという靴の職人がいました。その部屋には、小さな窓が一つあり、その窓からは道を通る人の足が見えます。彼の家族は早くに死に、マルチンは一人ぼっちでした。
ある日マルチンは、聖書を読み始めます。毎晩、夢中に読みました。ある夜マルチンは夢の中でイエス様の声を聞きます。「マルチン、マルチン。あした行くから待っておいで」。マルチンは「イエス様が来てくれる」と、胸がいっぱいになりました。
ふと、窓の外を見ると、雪かきのおじいさんが疲れて立っています。マルチンはおじいさんに声をかけます。「少しあったまって行きませんか」。おじいさんは、心も身体も温まり帰っていきました。
しばらくしてまた窓の外を見ると、女の人が赤ちゃんをあやしているのが見えます。赤ちゃんは泣きつづけ、女の人は寒そうなかっこうです。「どうぞ、うちに入りなさいな」そしてパンとスープを出してあげました。さてしばらくすると、窓の外で何か声が聞こえます。男の子が、おばあさんのリンゴを取ろうとしたので、おばあさんが怒っています。マルチンはいいました。「まあ、まあ、おばあさん、ゆるしておやんなさい。」そして「今日は、ワシがそのリンゴを買って、お前にあげるからな」と男の子にリンゴを一個持たせてあげました。二人は仲良く帰って行きました。
その夜マルチンは、きのうの夢で「明日行くから待っておいで」といわれたイエス様の声を思い出します。そして、昼間の雪かきのおじいさん、赤ちゃんを抱いた女の人、おばあさんと男の子の幻が現れたのです。「マルチン、私が分からなかったのか。あれはみんな私なんだよ」とイエスさまの声。
マルチンは叫びます。「わたしはイエス様にお会いしたんだ」。マルチンの心は、喜びでいっぱいになるのです。
マタイによる福音書25章40節
「そこで、王は答える。『はっきり言っておく。わたしの兄弟であるこの最も小さい者の一人にしたのは、わたし(主イエス)にしてくれたことなのである。』

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