使徒パウロは「私たちの本国は天にある」(20節)とフィリピの教会に宛てた手紙に書きました。フィリピはマケドニア東部の都市。「フィリピにあるユリウス・アウグストゥスの植民都市」と言われました。ローマ皇帝アウグストゥスが、この都市に退役軍人を多数入植させ、ローマ市民権をもつ人々を中心とした植民都市にしたからです。そのフィリピに生活する人々にとっての「本国」とは当然ローマ帝国のことでした。
ところが使徒パウロは、フィリピの教会の人々に「私たちの本国は天にある」と宣言するのです。言いかえるなら「わたしたちは、ローマはなく天に属する者です」と宣言したのです。
確かに圧倒的な軍事力による平和と繁栄を誇ったローマ帝国も、やがて滅びていったことを私たちは知っています。この世にあってどれほど繁栄し権力を持つ国や組織、個人があっても、それは一時のこと。また反対に苦しみや悲しみも、永遠ではありません。この世は仮住まいの現場。やがて行く天こそが、わたしたちの本国なのです。
「しかし、わたしたちの本国は天にあります。そこから主イエス・キリストが救い主として来られるのを、わたしたちは待っています」(フィリピ3:20)