獄中の賛美

「獄中の賛美」(2020年7月12日週報巻頭言 牧師 藤井秀一)
第二次世界大戦中のドイツ。多くの教会がヒトラーを称賛する流れの中で、イエス・キリストこそが主であると告白し、抵抗した「教会闘争」を担った一人にディートリッヒ・ボンヘッファーがあります。誰もがヒトラーに従う時代に、主イエスに従う者として、ナチスに抵抗し、ヒトラーの暗殺計画にさえ加わったことで、彼は捕えられ、収容所に送られ処刑されました。
彼は処刑される最後の2年間を獄中で過ごします。彼が処刑されたのはヒトラーが自殺するわずか3週間前でした。その獄中の中で、彼は多くの論述と詩を残しました。
彼が処刑される数ヶ月前。婚約者のマリアと家族に送った、獄中からの神への賛美の詩があります。「善き力に我囲まれ」という題で讃美歌となった詩です。
1 善き力に われかこまれ、守りなぐさめられて、     世の悩み 共にわかち、新しい日を望もう
2 過ぎた日々の 悩み重く なお、のしかかるときも、   さわぎ立つ心しずめ、みむねにしたがいゆく。
3 たとい主から差し出される杯は苦くても、
恐れず、感謝をこめて、 愛する手から受けよう。
4 輝かせよ、主のともし火、われらの闇の中に。
望みを主の手にゆだね、来たるべき朝を待とう。
5 善き力に 守られつつ、来たるべき時を待とう。
夜も朝もいつも神は われらと共にいます。
(新生讃美歌 73番)
今日の礼拝で読まれる聖書の個所も、パウロとシラスが、その獄中において賛美を歌った出来事です。正しい裁判も受けることができず、鞭打たれ、投獄された二人。しかし、この理不尽極まりない扱いを受けながらも、二人の心は、恨み、憎しみに縛られることなく、神への賛美を歌いつづける自由を失いませんでした。
いつの時代も、キリスト者が悪を前にして絶望することなく、むしろ善をもって打ち勝つ現場には、神への祈りの歌、賛美があったのです。

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